大切なものを写すこと

 今日は雨、車庫の中で刈払機のエンジンを掛ける初始動だ。丸歯の取り付けを確認して混合ガソリンを入れる、燃料コックを開いてアクセルを少し開ける、チョークを引っ張るリコイルスターターを引く当然1回では掛からない。1回、2回、3回…少し汗ばんでくる、そして手ごたえが在る「掛かれ!」ボボボ、ブルンブルン、ギュイーン白煙と共にエンジンが回る。排気ガスの匂い…悪くない。MAZDAのロタリーエンジン、正に広島原爆投下後の奈落から蘇生した不死鳥の会社だ。サバンナRX-3は親父が初めて手にした車だ。あの頃のロータリーエンジンの排気ガスの匂いどこか似ている。私が生まれたのを機に買った、当時は第一次オイルショックで国内は原油高騰により物価が急上昇し経済が混乱していた時代だった。写真が一枚在る、おふくろと私とこの車が写っている昭和の空気が流れるショットだ、当たり前だけど、おふくろが若い。親父はこの車を大切にしていた、いつもピカピカに磨き上げて車庫に入っていたのが今でも目に浮かぶ…親父はきっと大切な物を写真に収めたかったのだろう。刈払機のエンジンを止める、雨の音だけが優しく響く。

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