風吹く命
落ち葉は自ら動く事が出来ない、しかし風が吹くと命を得る。ある日祖父と凧を探しに行った糸が切れて飛ばされた凧だ。確か私が小学校に上がる前だと思った。祖父は暫く動かしていない車に、バッテリーを乗せ、エンジンオイルを注ぎ、ガソリンを入れてキーを捻る、エンジンは掛からない。私は、助手席にちょこんと座った、ガソリンと煙草とカビの匂いがする、祖父はセルの回る音を聴きながらキーを捻る、私がため息をつき、ダッシュボートで遊んでいるとエンジンが掛かったブルン…パンパンパンパン…白煙がもくもくしていた。祖父は得意気な顔をしていた、そして西の山に車を走らせた。車を停めて、山の中を探した、溜池、湧き水場、植林した林、開墾した畑…足が棒になるまで歩いた…凧は見つからなかった。諦めて帰ることにした…が、クルマのエンジンが掛からない、ボンネットを開ける祖父。私は助手席に座りボンネットと祖父の影を見ていた。夕方、もう薄暗くなっていた少し不安になる。ガラガラガラ…トラクターの音がした、父だ、父は無言でトラクターにワイヤーを掛け祖父の車をを引っ張り、そのまま帰路についた「車…壊れたね…」、「あぁ…そうだな…」帰り道ぽつりと話した。何日かして業者が祖父の車を引き取りに来た、祖父はその様子をずっと見ていた、車が去った後もしばらく外に居た、後で知ったがその車はスズキのスズライトという名前の車だった。かれこれ20年は経っていただろう、祖父はそれを大事に乗って居た、祖父が命を吹き込み最後の走りとなった…祖父の期待に応えて寿命を全うした…。私が納屋に行くとオイルのこぼれた跡が在った。
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