失ったおむすび/神へ祈る米
祖母の炊いた羽釜ごはん、それより旨い飯を食べた事が無い
祖母がこの家に嫁いでから毎日、1升の米を朝5時から炊いた、春夏秋冬薪を外の小屋から炊事場へ運ぶ...。
((祖母から教わった米のとぎ方))
最初の3回は釜一杯に水を入れ、混ぜる様に手早くとぎ、とぎ汁を切る
そして、ひたひたの少ない水でとぐ、水が透明になるまで何度も水を入れ替える
祖母は、炊くときの水加減を長年の目見当でしていたので詳しい量は覚えていない
祖母が竈に火を入れると、だんだんと米の甘い匂いがしてくる
ごはんが炊けるのが待ち遠しかった
炊き立てのご飯を「塩むすび」にしてくれる
ハフハフ、パクリ...熱い!
祖母と私が笑顔で見つめあう
時が流れて____
_____ガス炊飯器、電気炊飯器...祖母の炊いた米を食べる事は無くなった。
【5月:田植え/家族の絆】
5月になると、部落で「春祭り」を行う
田植え前に、村の神主に祝詞をあげてもらい、道祖神に、お参りをする
皆、手を合わせ安全と豊作を祈願する
それから、水源池と用水路の掃除をする
それが終わると会館でジンギスカンで宴が始まる、子供の頃は何度かご相伴に預かった
父は1滴も酒は飲まない
畔の修理をする(ねずみや蛇が穴を開けて巣を作るため、そこから水が漏れる)
水戸を開く
こぽこぽこぽ…水が流れ始める…いつ聞いても良い音だ
水田が命を吹き返す、鏡の様な水面がまぶしい
蛙達が沁みる様に鳴く
「代搔き」をする。父がトラクターでロータリーをかける
泥が飛び散り、全身泥だらけになる、それを一日中やる
その日は、早めに風呂に入る
「田植え」父が田植え機に乗り植える、私と母はパレットをトラクターに乗せる
祖父がトラクターで苗を運ぶ、祖母はハウスでパレットを外に出す
家族総出が何日か続く
私も、遊びに行く暇も無かった
田植えが終わり、家族皆で温泉に行く…1年で一回の家族旅行だ
祖父は酒を飲み上機嫌だ...特に話し合う事も無いが、皆の笑顔だけで幸せだった。
今日は晴れ、牧草の緑が風になびくのを見ると、水戸の音と蛙の声が聞こえて来るような気がする。
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