炎/天に向かって全てを投げ打つ
【9月:早霜】
凍てつく朝、こっそりと茶の間に歩いてゆく
音を立てない様に、木の廊下を慎重に歩く
昨晩は、早霜が降り父も母も一晩中、古タイヤを燃やしていた
暗闇に、畔に並べられた、タイヤに次々と火を点けて行く
私は窓越しに、暗闇を見つめる__ときおり、父の黒い影が見える
太陽が昇るまでの勝負だ
此処で稲を凍らしてしまったら、1年の苦労が全て無に成る、無論収入もゼロだ
あと、もう少しで収穫なのに、気まぐれだ
自然の前では人間なんて、なんと微々たる物か
しかし、父と母は食い下がる…ラックを着て、毛糸の帽子をかぶり一晩中火を灯し続ける
暗闇に燃える火は、父と母のそして家族の生きる執念の炎だ
天まで昇る、赤い炎と黒い煙
日が昇る
父と母は煤で真っ黒だ
父は、タオルを口から外すと、真っ黒い顔で笑った
私の登校時間には二人とも、深い眠りに入っていた
父と母は全てを守りきった…。
学校から帰ると、私は、裏玄関の父と母の長靴の中の土と草を手を入れて取り、揃えて置いた。
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