神無月/風を読む父と母

 【10月:藁(わら)焼き】

米の収穫も終わり、水田の後かたずけが始まる


父に、マッチ箱を渡される


「…風下から点けれよ。」


今日は晴れているが、少し風が強い、水田一面に稲わらの匂いの風が吹く


「風下って、どっち?」


父は少し不機嫌そうに言った


「顔に風が当たる方を向いて__背中だ!」


一応納得して、風を確認したら、刈り倒された藁の一番端に行く


「マッチを無駄にするなよ。」と父に言われたので慎重に火を点ける


藁を少しホックで持ち上げ空洞を作る、その中でマッチを擦る


これは、母から教わったやり方だ


白い煙が立ち炎が上がる


火の点いた藁をホックにひっかけ、風上に向かって、テン、テン、テンと火を点ける


一列目を上手く燃やせたので、少し得意気だった


しかし父と母は次の水田にもう行っている___。


私も急いで火を点ける


その時


風向きが変わった


風に煽られ、物凄い勢いで藁が燃え始める、火の粉も飛ぶ、他の藁にも火が付き、私の周りに火が走り取り囲まれた、物凄い熱さだ


父は、一目散に走って来て藁を蹴散らす


「ばかやろう!風下に逃げたら火に巻かれるぞ!」


私は、怒られて少しげんなりしたが


気を、取り直し「風向き」に注意しながら、藁を燃やした


結局その日は、辺りが暗くなるまで藁を燃やした


母に「もう家に入りなさい」と言われ裏玄関で長靴を脱いだ、白い靴下が真っ黒だった


窓から外を見ると、父が最後に煙が出ている藁の燃えかすを一つ一つ土を掛けて消していた


家族で夕食を取る、何時もと変わらぬ食事だが、私だけバツが悪い


私は、ある事を思い出して_食事の途中で_裏玄関に急いだ


私の作業着のポケットから_マッチ箱を取り出し_靴箱の上に


そっと置いた。






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