男の勲章と湯気の絆

 【11月:温泉】

11月農作業が全て終わり、家族で温泉に行くことに成った、山はもう白い薄化粧を始めた


車で20分ほどで温泉に着く


硫黄の匂いがする、それだけでワクワクした


祖父、父、私__無類の温泉好きだ!


早速、「男湯」の暖簾をくぐる


結構、混んでいる


私は、パッパッと服を脱ぎ、脱衣籠に放り込むと温泉に入るはやる気持ちを抑えきれないでいた


父が「おい!」と低い声で呼び止める


私は、裸のまま服をたたんだ


「ガラガラ」戸を開け、洗い場に3人並んだ


私が真ん中に挟まれている


体を洗う


横目で父を見ると、鏡を見ながら体を洗っている、私も真似をする


凄いのが、父の手術の痕だ


背中からお腹の方に向け「刀で切られた様な」痕が残る


横を通る人も2度見するぐらいだ


しかし、父は全く動じない、むしろ涼しい顔をして、堂々としている


そんな父が誇らしく感じた


祖父は、もう湯船に浸かっている


私は後を追うように祖父の横に入る…


何も話さないが、祖父の満足な顔を見るだけで私も笑顔になる


父が来た


「椅子にまだ石鹸がついていたぞ、最後まで流せ」と低い口調で言われた


「分かった、次から気を付ける」


父は、深いため息をついて、満足げに湯船に沈んだ


3人して、耳たぶが湯面に着くぐらい浸かる、これが私の実家流風呂の浸かり方だ


当然、話などしない


でも、それでだけでいい、父と祖父がそばに居るだけで嬉しかった


風呂から上がり、休憩所で、祖父はビール、父は牛乳を飲み、私はモナカアイスを食べた


皆、笑顔だ...しばらくして、祖母と母も上がって来た


母が「いい湯だったね、疲れがとれるわ」そう言った


その言葉を聞くと、なんか嬉しかった


祖母と母は持ってきたミカンを食べる


私は、家族の笑顔を見て、心からの湯気は冷める事が無かった。





コメント

このブログの人気の投稿

境界を越える夢 ― 明治の風に吹かれて

自分自身のメンテナンスの時間

町内会ゴミ拾い~84歳の生きざま。